Day 12016/07/09
バンコクから南西約250㎞のところにあるタイ王室御用達の保養地・ホアヒン。
その郊外に、最近にわかに注目を浴びている秘境の洞窟があるということで、バンコクから1泊2日で行ってきました!
バンコクからホアヒンへは、飛行機、電車、乗り合いバンなどの各種交通手段がありますが、乗り合いバン「ロットゥ」で行くのがポピュラーです。
まずは電車等で「Victory Monument(バンコク戦勝記念塔)」へ。
ここから各地方都市へ向かう乗り合いバンがたくさん出ています。
出発スケジュールは、あってないような感じ。最終的には人の集まり次第のようです。
料金は一人180バーツ(約530円)
※あんまり大きい荷物持っていると一人分追加請求あるのでご注意を。
約3時間後、ホアヒンの中心地に到着。
ゲストハウスにチェックインしたのち、翌朝洞窟へ行くための足としてレンタルバイクを探してると尋ねたら、1日250パーツ(約740円)でレンタルするよ、と知り合いのバイクを持ってきてくれました。
クーハーカルハット宮殿までは、タクシーチャーターも可能ですが約3000バーツ(約8860円)とちょっとお高め。現地ツアーも個人旅行者にとっては非効率。
ゆえに、経済的かつ効率的なレンタルバイクを借りていく旅人が多いようです。
そして翌朝、
人生4度目にして1勝2敗(事故前科あり)のわたしは、交通量が少なめの7時前に出発しました。
基本的にタイのレンタルバイクはガス欠手前の状態で渡されます。
ちゃんとしたガソリンスタンドは思ったほど少なかったですが、瓶詰のオイルを庭先で売っている家庭や何ともお粗末なガススタンドを併設した商店がところどころに点在しています。
とはいえ、早めの給油がベストです。
オイルのクオリティはよく分かりませんが、とりあえず満タンにしてもらったら、そこで買ったパン2個含めて金額75バーツ(約222円)でした。
改めてタイの物価の安さを思い知りました。
そして、このおばちゃん、とてもいい人でした。
ホアヒンから約50㎞南下したところに、
カオ・サム・ローイ・ヨート国立公園(Khao Sam Roi Yot National Park)があります。
この公園は300もの頂を持つ石灰岩の山脈を擁し、風雨の浸食を受けて、まるでギアナ高地のテーブルマウンテンかのような風格を漂わせます。
実に雄大。
その公園に、プラヤ・ナコーン洞窟(Phraya Nakhon Cave)があり、その洞窟に今回お目当ての「クーハーカルハット宮殿」(Phra Thinang Khuha Kharuhat)が祀られています。
ホアヒン市内はそこそこ交通量はあったものの、少し郊外になるとあっという間に交通量は減り、初心者でも走りやすい道路に。
ただし、道順は一見シンプルそうでも意外に分かりにくいです。
道路標識が少ないうえタイ語表記は判断能力を鈍らせます。
わたしはスマホに現地SIMカード入れていたので、Google Mapに「Phraya Nakhon Cave」を目的地に設定してナビ代わりにしてました。
寄り道したり、少し迷ったり、安全運転の時速50㎞程度の走行で、大体2時間弱かかりました。
タイ語はさっぱりですが、
写真と雰囲気で、「プラヤ・ナコーン洞窟まであと5㎞」ということなのでしょう。
目的地近くになると、一定の間隔でこんな分かりやすい標識が建てられていました。
テンションにもドライブがかかります!
ホアヒンからしばらく一直線に南下して、カオ・サム・ローイ・ヨート国立公園付近で一度、大きく左折するところがあります。
その左折した先にあるゲートです。
もうここまで来たら攻略したも同然です。
目的地まであと5㎞程度です。
プラヤ・ナコーン洞窟おひざ元の小さな村に到着しました。
車の流れに沿って右折すると小さな橋が架かっています。
下にはたくさんのボートが寄港しています。
橋を渡ると、プラヤ・ナコーン洞窟の真っ赤な本ゲートがお出ましです。
とうとうプラヤ・ナコーン洞窟の入口前に到着しました!
ホアヒン7時前後に出て9時15分ごろ到着。約2時間弱。
広い駐車場に土産物屋、レストラン、お手洗いが完備されています。トイレは有料(3バーツぐらい)
駐車料金もかかると公式HPにありましたが、運が良かったのか、実は徴収してないのか不明ですが、何も請求されませんでした。
開園時間は毎日8時~16時半。
チケット売り場の人が到着する8時前に来ると、入場料払わなくて済む場合もあるようです。
駐車場から海岸に出たところにあるプラヤ・ナコーン洞窟のゴージャスなオブジェ。
まばゆいばかりの黄金の双龍と、(何故か)巨大な双蟹に護られたクーハーカルハット宮殿。
さすがは高貴なタイ国王にささげられた宮殿です。
駐車場脇に緑色の屋根のチケット売り場があります。
チケット売り場といっても、係のお姉さんが2名ほど中に座っているだけで、パンフレットとか地図とか、観光っぽいものは何一つ置いていません。
かろうじて横に案内板があります。でもタイ語です。
(英語併記されてたかな?)
入場料は外国人で大人200バーツ(約600円)
体力に自信のある人はその脇の階段から山越えが始まります。徒歩約20分。
体力に自信のない人は、ボートでショートカットできます。
チケット売り場の横をまっすぐ行くと、ボート乗り場があります。
10人乗り1艘で一人200バーツぐらい。
ものの5分ぐらいで向こう岸に渡れるようです。
ただし、スケジュールがないようなので、急いでいる人にはおすすめできません。
また遠浅のビーチなのでボートが接岸できず、客はボートまで歩く羽目になるそうです。
そのため、スニーカー等の人は要注意です。
到着後に足を洗うところはあるのですが、拭くものが事前にあると便利です。
断じてお金が惜しいわけではなく、
今回は一番あてになる自分の足を信じて、山越えを選択しました。
登山道は整備されていますが、行く手を阻むかのごとく、ハードなトレイルが続きます。
アップダウンが激しいです。
雨で濡れて非常に滑りやすいです。
ハイキングレベルとなめてかかると痛い目見ます。
山越え標準タイムは徒歩約30分、
ベストショットが撮れる時間帯の10時~10時半をひたすら目指して、猛烈に駆け抜けて15分で攻略しました。
山越えの途中から見た眺め。
右手の砂州がショートカット用のボートの離発着所。
この時は空が青く、ホワイトサンズビーチとのコントラストが実に美しい。
雨が降りやすい地域で、午前中のバイク移動中、小雨が降りはじめてどうなることかと思案しておりましたが。
午前のこの時間では、比較的観光客は少なめでしたが、それでも比較的団体客が多く、驚きました。
山越え後、目の前に標識。
タイ語で読めないですが、おそらく「プラヤ・ナコーン洞窟へようこそ」的なメッセージでしょう。
ここからは園内の宿泊・キャンプサイトになります。
バンガローや売店・レストラン、公衆トイレなど、完備されています。
おそろしいほどきれいに整備されています。
目の前には美しいビーチ、背後には熱帯雨林に囲まれた岩山、家族連れのピクニックには最適ですね。
プラヤ・ナコーン洞窟のモニュメント。
はためくタイ国旗がいい感じ。
ポイント、ポイントに洞窟はコッチ、的な標識が親切に設置されているので迷うことはありません。
標識通りに進むと、
いよいよここからが正念場。
プラヤ・ナコーン洞窟への険しいトレッキングです。
登山道は整備されていますが、それでも歩きにくい岩がごろごろしていて急こう配の坂が続き、無駄に体力奪われます。
ちゃんとした靴があった方が無難です。
サンダルはしんどいと思います。足を痛めます。
標準タイムは片道30~40分。
標高的にも距離的にもハイキングレベルと称されますが、十分険しい登山です。
体力に自信のない方は、ゆっくりゆっくり自分のペースで進みましょう。
運がよければ野生のサルや珍しい生き物、植物がみられるようです。
とはいえ、
それらには一切目もくれず、滝のように吹き出る汗と鼻息を荒くしながら、一目散に駆け上ります。
かなりの疲労に心が折れそうでしたが、ようやくこんな看板を発見しました。
洞窟の案内図のようです。
そこから少し歩いたところに、
いよいよ洞窟目前の入口に到着。
標準タイムを大きく上回る15分程度で登り切りました。
ここぞって時の人間の底力って偉大。
(無駄遣いしている気が)
ここからは逆に下りになります。
手すりがないので、雨の時は特に足元ご注意を。
途中出現した不気味なバケモノ鍾乳石「Natural Enchanted Dam」
意訳すれば「魅惑の天然ダム」??
何千年という時をかけて、まるで洞窟を護る祠のようにひっそりと生まれた鍾乳石の結晶。
感慨深いです。
さらに進むと「Natural Bridge」登場。
大量の雨が降り注いだことで天井が崩落したようです。
別名「デッドブリッジ(死の橋?)」。
写真で見ると小さく見えますが、結構な迫力の巨大天然ドームですよ。
最後の標識がこれ。
高まる期待!あふれる興奮!
この標識から一歩足を踏み入れた瞬間、ひんやりした風がからだを吹き抜けました。
そこから明らかに空気が一変しました。
霊感のないわたしですら、尋常じゃない、ただならぬ何かを感じ取ります。
まるで立ち入るものを拒むような厳かな空気と緊張感。
いよいよあの光の向こうが宮殿のある洞窟です。
吸い込まれるように進んでいくと…
来ました!写真で見たクーハーカルハット宮殿!
人気がなく、鳥のさえずりもなく、かすかに鈴虫のような虫の声が聞こえるぐらいで、怖いぐらい静まり返っています。
外界と隔絶された洞窟内は実にひんやりと冷たい空気に包まれています。
知らず知らずのうちに鳥肌が立っていました。
誰かが行っていた、”精霊が宿っている”、そんな言葉が頭をよぎりました。
まさに、そんな感じ。
洞窟の天井の穴からは太陽の光がやさしく降り注ぎ、黄金色と鮮やかな青の屋根をまとった祠を照らして、息をのむほどの美しさです。
想像以上の感動。
思わず言葉を失い、宮殿の前で立ち尽くし、こうべを垂れました。
情報がないので正確な大きさは不明ですが、感覚的に、直径は100m程度、高さは6階建てビルぐらいでしょうか…
(あくまでも記憶の中での感覚です)
奥行きはありますが、こじんまりとした洞窟です。
小高く盛られた丘の上に建てられたこの祠は、1890年、タイ国王ラーマ5世のために建造されたそうです。
祠はバンコクで作られ、この地に運ばれてきたとか。
多くの職人の手でこの洞窟におさめられたそうです。
誰が最初に見つけたか、王様が気に入ったこの洞窟、まさに高貴な方にふさわしい洞窟ですね。
太陽の光が祠に降り注ぐ絶好のタイミングは、
何となく逃した気がします。
残念ながら、期待した光の筋が見られなかった…
夏場だったので、通常よりも早めに太陽が上ぼってしまった可能性があります。
誰もいない洞窟でベストショットを狙うなら、9時前後到着を目指した方が無難です。
まぁ、それでも十分に神々しいですが・・・
別の角度から。
あまりの静寂と荘厳さに、思わず息を殺してしまいます。
何だか、写真を撮るのも気が引ける。
森の精霊が棲んでいると言われても納得の聖域です。
大量の汗が次第にクールダウンされ、心身ともに浄化されていくようでした。
祠の裏側。
陽の光に照らされて、精巧に彩られた金細工とスカイブルーの屋根、赤いカーテンが一層鮮やかさを増しています。
丘の大きさと祠のサイズ、人工的に作られた階段までもが見事に計算され、美しいシンメトリーを放っています。
祠の中にはお花や仏塔のミニチュアなどが収められていました。
この、ただならぬ気配と雰囲気を前に、あの騒々しい中国人団体客ですらも、口数少なめに鑑賞しているのがとても印象的でした。
祠の近くに生えた大きな鍾乳石の柱。
その巨大さからいって、気の遠くなるような年月をかけているはず。
これらの鍾乳石には柵が張られていないので触ることも可能です。
この奥の暗がりに、さらにお賽銭を奉納する祠が祀られています。
電灯がないので見逃しがちですが、奥まで行ってみましょう。
これが第2の祠。
一本のろうそくしか灯されていない、ほの暗い岩穴には仏像などが安置されています。
目が慣れてくるまで一瞬何も見えませんでした。
これに、心ばかりのお布施を奉納しました。
鍾乳石の柱の横には、岩の落書きがありました。
てっきり、よくある古代の落書きかと思って説明を見ると、
かつてここを訪れた3人の国王陛下らによる落書きだそうです。
一つはラーマ国王5世が1890年訪れた時、
二つ目はラーマ国王7世が1926年に訪れた際、
三つ目は現国王ラーマ9世によるもの
それぞれの国王のモノグラムだそうですが、意味不明です。
10時を15分ぐらい回ったあたりから、ちらほらと観光客が集まりはじめました。
欧米人の団体、中華系の団体、地元のファミリー、さまざまです。
注意書きがあるわけでもないのですが、申し合わせたように誰もが声を押し殺すようになります。
圧倒的な神々しさを前に人間は万国共通の感情を持つのですね。
祠の対面にある名もなき巨大な御岩。
ちなみに、ここの地面の赤土は、衣服に着くとなかなか取れません。
ご注意を。(漂白してもきれいに落ちませんでした)
陽が高くなって、さらに光が差し込み始めました。
10時にたどり着いた時よりも、洞窟内が明るく、空気がどこか軽くなった気がしました。
洞窟に棲む精霊も、人が増えてどこかに出かけてしまったのでしょうか。
名残惜しい気持ちを抱えながらタイムリミットが迫り、泣く泣く30分程度で退散。
(バンコクへのバンの時間が迫っていたので。通常、時間制限はありません)
それでも、
こんな素敵な秘境を知ることができて、実に有意義なひとときでした。
おしまい
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