
【コラム】インドで私に「日常」をくれた人

インドの旅中での出来事。早朝、深夜バスに乗ってインド旅の3つ目の町に着いた。そして旅先での、ほんの少しの会話が、私に家族といるようなあたたかさ、日常のような居心地の良さをくれたのだ。
早朝、深夜バスに乗ってインド旅の3つ目の町に着いた。まだまだビビっていた私は、そそくさとリクシャを掴まえて宿街まで移動し、1泊200円程度の安宿に泊まることにした。
起こされて少々不機嫌な宿の若者に通された部屋は、ワインレッドのカーペットに、シングルサイズよりも狭いベッドがあるだけの小さな屋根裏部屋だった。
ふと気になって、ベッドの下を覗き込むと、使用済みのコンドームが落ちていた。背筋がぞわわっとして、持っていた寝袋をベッドの上に広げた。ため息とともに腰を降ろし、まとめていた長い髪をほどいた。外に目をやると、露天温泉施設が見下ろせる。
「よし、さっぱりしてくるか」と息を吸い込み、髪をまとめ直し部屋を出た。すると先ほどの若者ではない、別の若者に「ハ〜イ!元気〜??」と声をかけられた。そのあまりのテンションの高さに、ここに来て初めてくすり、と笑えたのだ。

Shino Ichimiya「ラダック/乾いた大地と蒼い空とシャンティ」
それから部屋を出る時と帰る時、彼と会話するのがお決まりになった。朝、浴場に向かうときは「ハ〜イ!元気?いってらっしゃい!」。朝出かけるときは今日の予定。夜帰って来たときは一日の報告。彼とのほんの少しの会話が、私に家族といるようなあたたかさ、日常のような居心地の良さをくれたのだ。
ライター:Shino Ichimiya
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