フィリピン最大のインディーズ映画祭の「Cinemalaya」で印象に残った作品

メインコンペティションでは、長編9作、短編10作。そして他の映画祭でグランプリを受賞した作品の特別上映や、昨年惜しくも急逝したフランシス・パション監督のトリビュート作品が上映されるなど、たくさんの新しい試みがみられました。今回筆者が見た中でも特に印象に残った作品を紹介します。

フィリピン最大のインディーズ映画祭の「Cinemalaya(シネマラヤ)」に参加するため、熱波の続く日本から南国フィリピンのマニラへ。日本を上まわる激しい暑さを予想していたのですが、雨期のマニラは雨が断続的に降り続き、肌寒さを感じるほどでした。
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深夜便で羽田を飛び立ち、マニラに到着したのは現地時間で午前4時。早朝にもかかわらず、ニノイアキノ国際空港は、出迎えの人々の熱気に包まれていました。多くは海外で働いている家族の帰りを待つ人々です。フィリピンから海外へ出稼ぎにでる人々は一般的にOFW(Overseas Filipino Workers)と呼ばれており、フィリピン経済を支えています。知識層の海外流出が止まらない国内環境は、フィリピンで大きな問題となっています。

フィリピン最大のインディーズ映画祭であるCinemalayaは、今年で12周年を迎えました。昨年は短編数編と海外の作品などのプレミア上映にとどまっていましたが、今年は見事に復活。メインコンペティションでは、長編9作、短編10作。そして他の映画祭でグランプリを受賞した作品の特別上映や、昨年惜しくも急逝したフランシス・パション監督のトリビュート作品が上映されるなど、たくさんの新しい試みがみられました。

今回筆者が見た作品は短編長編合わせて17本。その中でも特に印象に残った作品を紹介します。
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I America

「I America」は、」アメリカ軍基地の街であったスービックを舞台とするアメラジアン(アメリカ軍人と現地のアジア人とのミックスルーツの子ども達)の少女が主人公の物語。アメリカでの新しい人生を夢見るエリカは、父親だと思われる退役軍人を、SNSを使って探し出します。感動の対面を果たし、渡航を目前に控えたある日、彼がまったくの他人である事を知ります。

スービックが基地の街であったことは知っていましたが、沖縄などと同じように、アメラジアンの子ども達が残されたことは今回まで知りませんでした。逆境にも負けず、カラッとした明るさを感じさせるのは、さすがはフィリピーナ。最後のシーンでは、タイトルに込められた意味が明らかになり、どよめきが起こりました。

Mercury is Mine

フィリピンの片田舎で小さな食堂を営む中年女性カルメン。客足は決して多くなく、いよいよ店じまいを考え始めます。そんなある日の嵐の夜、アメリカ人の少年マーキュリーが現れます。最初はぎこちなかった二人の関係ですが、母と息子、もしくはまるで恋人同士のように、関係が変わっていきます。 

「Mercury is Mine」はフィリピン内で料理がおいしいことで有名なパンパンガ地方を舞台にしたハイテンポのブラックコメディー。必要以上に愛想は良くないけれど、とことん面倒見がいい中部ルソンの典型的な女性カルメンを、フィリピンで有名なコメディエンヌが実に巧妙に演じています。
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Ang Hapon ni Nanding(Nanding’s afternoons)

続いて紹介するのは昨年上映した作品『ノノ』のロメロ・トレンティーノ監督の新作短編。毎日同じような穏やか日々を送る、市長秘書のナンディン。彼の前に母を失った少年が現れ、彼の暮らしは姿を変えていきます。今回の作品でも、なんでもないような日々の暮らしをフィルムの中に閉じ込める、監督特有の温かいまなざしは健在でした。ロメロ監督はCinemalayaの常連なので、次回作にも期待したいです。

FISH Out of Water

韓国に住むフィリピンと韓国のミックスルーツの少年の物語。東南アジア系のくっきりとした顔立ちのせいで激しいいじめにあうミンジュ。韓国人の父親は既に亡くなり、シングルマザーのフィリピーナの母親と二人で暮らしています。自分の中のフィリピンの血を嫌い、母親が作るフィリピン料理から目を背ける日々でしたが、ある事件をきっかけに、自分のルーツと向き合うことになります。

この作品は短編ながらも、今回のシネマラヤで一番瑞々しく心に響く作品でした。実際に韓国に留学した経験もある監督が、上映後に自分のSNSで「韓国やその他の国に住むミックスルーツの人々に捧げる。世界は一つ。ヘイトをなくそう」と呼びかけていたのがとても印象的でした。
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Forever Natin(Our Forever)

「Forever Natin(Our Forever)」はレズビアンのカップルのパットとカレンの物語。ふざけて書き始めた「恋愛契約書」は7年目を迎えました。記念日のある日、パットはカレンへのサプライズを思いつきます。

LGBTヘの理解が深いと言われるフィリピンですが、カソリック教徒も多いこの国では、LGBTコミュニティの人々と、カソリック教会の間には深い溝があるようです。パットが最後にくだした決断に、深い感動と切なさを覚えました。この作品は賞こそは受賞しませんでしたが、短編部門の観客投票では第一位に選ばれています。

明るいようで、どこか皮肉を感じさせる複雑な作品が多いフィリピン映画。これからもフィリピンインディーズ映画界の躍進は続いて行きそうです。

文・写真:アンガット代表 永井愛子

Compathy Magazine編集部

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