旅行前に知っておきたい!ドイツの宗教事情と歴史背景

今回はドイツの宗教事情を解説します。ところで、ドイツの宗教といえば何を思いつくでしょうか。「キリスト教」と答える方が多いでしょう。ところが、キリスト教でもカトリックとプロテスタントで異なります。頭が混乱してきましたか?それでは気になるドイツの宗教事情について、なるべく丁寧にコンパクトに解説していきましょう。

こんにちは、Compathy Magazineライターの新田浩之です。
今回はドイツの宗教事情を解説します。ところで、ドイツの宗教といえば何を思いつくでしょうか。「キリスト教」と答える方が多いでしょう。ところが、キリスト教でもカトリックとプロテスタントで異なります。頭が混乱してきましたか? それでは、なるべく丁寧にコンパクトに解説していきましょう。

ドイツとキリスト教の歴史

神聖ローマ帝国とキリスト教

現在でも、多くのドイツ人が信仰しているのがキリスト教です。しかし、ドイツにキリスト教が伝えられたのは962年。それ以前、人々は土着の宗教を信じていました。

962年、ドイツの王様オットー1世はキリスト教の総本山、ローマ教皇から戴冠を受け「ローマ皇帝」と認定されたのです。これが教科書に出てくる「神聖ローマ帝国」の始まりです。神聖ローマ帝国はイタリアから西欧諸国を広くカバー。正しく、ヨーロッパを代表する一大帝国だったのです。

神聖ローマ帝国の王様とローマ教皇は持ちつ持たれつの関係。それでも、最終的にはローマ教皇のほうが権威は上だったのです。11世紀後半になると、聖地エルサレムをイスラーム教徒から取り返す十字軍運動が開始。神聖ローマ帝国も参加しましたが、失敗に終わってしまいました。

革命的な宗教改革

時代が経つにつれキリスト教は腐っていきました。キリスト教のトップであるローマ法皇もやりたい放題。見るも無残な状況だったのです。1517年、その状況に耐えかねて声をあげた聖職者がドイツに現れました。それが、マルチン・ルターなのです。

ルターはローマ法王に強く抗議。それに対して、ローマ法王はルターを「破門」にしました。やがて、ルターの考え方を支持する人々が新たなグループを結成。それが「エバンゲリッシュ(プロテスタント)」なのです。

プロテスタントとカトリック(旧来のキリスト教)の違いは何でしょうか。
一つ目に、エバンゲリッシュはマリア(キリストの母)信仰がありません。多くのプロテスタント教会にはマリア像がないはずです。一方、カトリックでは必ずマリア像があります。
二つ目に、エバンゲリッシュはカトリックよりも聖書を大切にします。もちろん、カトリックも聖書を大切にしますが、エバンゲリッシュのほうが聖書を厳格に守ります。なので、カトリックの教会には十字架にキリスト像がありますがエバンゲリッシュの教会の十字架にはキリスト像がありません。これは偶像崇拝の解釈の違いから生じています。
三つ目に、ミサ(礼拝)中の儀式が異なります。このように、同じキリスト教であっても、カトリックとプロテスタントは大きく異なるのです。

ナチスドイツとキリスト教の関係

ドイツのキリスト教が大きな困難に直面したのがナチス時代。ナチスはヒトラーを最上位にしたため、キリスト教と矛盾が生じたのです。カトリックはナチス政権に妥協的な姿勢でした。時の教皇ピウス12世は積極的にホロコーストを止めようとはしなかったのです。プロテスタントも妥協的な姿勢で臨みました。

しかし、カトリックでもプロテスタントでもナチスに抵抗した聖職者もいました。ナチスに抵抗した一番有名な聖職者がプロテスタントの牧師、ディートリヒ・ボンヘッファー。彼はナチス政権の樹立から露骨にナチスを批判したのです。ヒトラーの暗殺計画も立てましたが、1945年4月9日、強制収容所で処刑されました。

東ドイツでの宗教の役割

第二次世界大戦後、ドイツは資本主義陣営のドイツ連邦共和国(西ドイツ)と社会主義陣営のドイツ民主共和国(東ドイツ)に分かれました。西ドイツは信仰の自由が認められていましたが、東ドイツでは信仰の自由はありませんでした。社会主義思想の生みの親であるマルクスは「宗教はアヘンだ」と言い、宗教を否定。それ以来、社会主義国は宗教を抑圧するようになったのです。

東ドイツでは教会によるミサ・礼拝は行われましたが、参加する者は秘密警察によって監視されていました。もちろん、キリスト教を熱心に信仰する者は社会的に高い地位に就くことは不可能だったのです。しかし、東ドイツ政府は伝統的な教会を完全に廃止することはできませんでした。
1980年代の民主化運動ではキリスト教はデモに参加する人々を勇気づけました。人々は精神的な拠り所を求めて教会に殺到。政府は為すすべもありませんでした。

Photo credit: Андрей Туманов「Three days in Frankfurt」

Photo credit: Андрей Туманов「Three days in Frankfurt

現在のドイツは宗教をどのように考えているの?

今まではドイツとキリスト教の歴史を簡単に見てきました。それでは、信仰の自由が認められている現在のドイツでは、宗教はどのように扱われているのでしょうか。
現在のドイツは「国教」は定めていません。もちろん、国教がない代わりに、ドイツ政府は宗教団体と契約(コンコルダート)を締結。国は教会税の徴収と分配を、宗教団体は社会福祉事業を行っています。コンコルダートを結んでいる多くがキリスト教系の団体となっています。

実はドイツには二つの宗教区分が存在します。一つ目がコンコルダートが結べる「公法上の宗教団体」、二つ目が「民法上の宗教団体」です。いくつかの条件をクリアすると「公法上の宗教団体」になれます。
問題は、ドイツ国内で勢力を伸ばすイスラーム教です。イスラーム教は「公法上の宗教団体」とはなっていません。いずれは、「公法上の宗教団体」になるのでしょうが、課題は山積みで紆余曲折が続いています。

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Hiroshi Nitta

Hiroshi Nitta

国鉄が民営化された年、1987年生まれ。神戸市在住。中東欧、ロシアを中心に民族問題や戦争の記憶に興味があります。趣味は鉄道(乗り鉄とダイヤ)と読書です。ロシア連邦全共和国を制覇することを夢見ています。ブログ:Tabi-PROG



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