
旅する食。世界三大料理から学ぶ本物のグルメとは

突然ですが、みなさんはどこの国の料理、あるいはスイーツがお好みですか?
数年前から長く続く、空前のパンケーキブーム。昨年、東京の原宿には、新たにアサイーやポップコーン専門のお店も上陸したそうですね。更に最近では、台湾スイーツが注目されているようです。日本に居ながら、多国籍料理が食べられることは今では当たり前のことです。また、料理だけでなくマナーや食事の歴史的背景まで分かると、もっと味わい深くなるはずです。
今回はその中でも全世界で広く浸透し、その名を轟かせる世界三大料理についてご紹介します。
「世界三大料理」の3つ、ご存知ですか
写真:トモテラ「年跨ぎパリ旅行ちょっとランス」より
世界三大料理とは、伝統的には中華料理、フランス料理、トルコ料理を指すものです。
これらは世界で最も美味しい三大料理、と言う意味ではなく、世界の料理に影響を与えた料理を意味します。いずれも広大な領土の大帝国における宮廷料理として発展しました。また、国富を背景に多くの料理人を召し抱えて腕を争わせた結果、多彩で豪華な料理文化が発達したのだそうです。
(1)日本人にもなじみ深い中華料理
Photo Credit: Jon Siegel via Compfight cc
強い火力を用いる炒め物が目立ち、ラードやゴマ油をたっぷり使うイメージの、中華料理。生野菜を使った冷たい料理は少なく、魚介類はナマズなどの淡水魚がよく使われるようです。
単に中華料理といってもあの広大な面積ですから、地域によって食材や調理法が異なります。
●北京料理
写真:Daisuke Taniwaki「北京プチ語学留学旅行」より
北京独特の料理ではなく、発祥は中国北部。宮廷料理人により洗練されて、このように呼ばれます。特徴は繊細かつ見栄えと、寒冷地で生まれたためカロリーの高い料理が多い点です。
麦や雑穀が主食で、味付けは塩が主流です。例として、北京ダック、ジンギスカン、餃子などがあります。
●上海料理
長江下流地域の上海を中心とし、魚介類や農作物が豊富に使われています。そのため米を主食としています。味付けはコクがあり、甘く、やや濃いのが特徴です。例として、上海蟹、小籠包などがあります。
●四川料理
写真:Jun「辛いものに囲まれたパンダと出会えた四川 成都への旅」より
四川山椒と豆板醤を用いた、麻辣(マーラー)と呼ばれる、舌の痺れるような辛い味が特徴の料理です。辛いだけではなく酢の旨みにもこだわっています。長江上流の内陸を中心とした古来から食材が豊かな地域で、野菜、鳥獣肉、穀類が主です。例として、麻婆豆腐や担々麺があります。
●広東料理
豊富な食材と海鮮を中心としていて、また飲茶や高級食材があるのがこの料理の特徴です。澄んだ色と香りを大切にし、さっぱりとした味付けで油を多く使っています。八宝菜、酢豚、フカヒレなどがこの類です。
テーブルマナー
Photo Credit: TGKW via Compfight cc
円卓を囲み、時計回りに料理をとっていきます。なぜ円卓なのかというと、楽しく賑やかに食事をしやすくするためです。中華料理は大勢でわいわい賑やかに食べるものなのです。座り方としてはドアから遠い方が上座、近い方が下座となっています。
また、中国では客人を招く際、できるだけたくさんの料理でもてなす風習があります。残さず食べてしまうことは、料理が足りなかったという不満の意思表示になってしまいます。逆に多少残してあると「食べきれないほど、おいしくいただきました」というサインです。
スープなどの汁物に関しては日本のように器に口をつけるのは良くないとされています。レンゲですくうのが基本です。また、取り分けて食べるのが当たり前のため、一品料理を頼むと山盛りの量が出されることがありますので注意しましょう。
(2)美食の代表「フランス料理」
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フランス料理は、実は16世紀にイタリアからもたらされた宮廷料理だと言われています。当時フランス貴族のハプスブルク家を通して、ロシアやドイツに広がりました。ひと皿ひと皿料理が提供される今のサービス方法は、寒いロシアで料理が冷めないための習慣が、フランスに逆輸入されたものです。
コース料理まとめ
- 小前菜(アミューズ・ブッシュ)
前菜の、更に前に出てくる前菜です。「食欲を駆り立てること」を役割としているため、量は少なく色鮮やか。味付けは、塩味や酸味などが利いた刺激的なものが多いのが特徴です。
- 前菜(アントレまたはオードブル)
こちらがいわゆる前菜です。 オードブルとはスープの前に出される料理のこと。酸性である肉料理を食べる前に、アルカリ性のサラダ類を摂取することで、血液のバランスを整えます。
- ポタージュ(スープ)
一般的にトロみのある透明でないスープがポタージュ。そして透明なものがスープですが、広義ではどちらもスープ全般を指します。スープを飲むのではなく、スプーンですくって食べます。ちなみに、フランス式は奥から手前に、イギリス式は手前から奥にすくうのが常識です。
このときパンも出されますが、後にメイン料理が待っているので食べ過ぎないように注意です。
- 魚料理(ポワソン)
メインとなる魚料理。魚だけでなく、海老や蟹も含まれます。
写真:tabitabi parsley「france2011.1 -パリ編ver2-」より
- 口直し用氷菓(ソルベまたはグラニテ)
冷たく甘い食べ物が出されます。魚料理の後に口の中をリセットする目的です。そのため、シャーベットのようなさっぱりとしたものが多いです。
ただし、出てくるタイミングはコースの内容により異なることもあります。
- 肉料理(ヴィヤンドゥ)
メインとなる肉料理です。 使われるお肉によって呼び方や分類わけされています。 鶏、豚、牛、羊、鹿の他、野禽類の料理がヴィヤンドゥに分類されます。左端から切り分けて食べていくのが一般的です。
- チーズ (フロマージュ )
再度口の中をリセットするため、ここでチーズが出されることがあります。チーズには二日酔いを緩和させる力があります。
Photo Credit: disneymike via Compfight cc
- デザート (アヴァンデセールとデセール )
値段の高いコースだと、2種類用意されていたりします。 2種類ある場合は、先に出たデセールを「アヴァンデセール」と呼びます。洋菓子の前に、フルーツが先に出てきます。甘いものは、お腹に溜まった食事を、胃から腸へ押し出す働きを促します。
- コーヒー(カフェ・ウ・テ)
コーヒーにはリラックスと消化促進の作用があります。エスプレッソや紅茶のことも指します。
- プティ・フール
カフェ・ウ・テのお茶うけとして。最後の最後に一口サイズの小さな洋菓子で締めくくられます。
フランス料理の特徴
写真:tabitabi parsley「2013.11 パリの夜景とベルサイユ宮殿・一瞬シャルトル大聖堂・最後はプーランクとムール貝とあのセレブカップルのワイン」
ソースの体系が高度に発達していることが特徴で、赤ワインや白ワインが用いられます。
肉は内臓系、魚は白身を試用することが多いです。中でもカエルは高級食材とされ、魚料理に分類されます。また、エスカルゴや鳩を食べるのですが、これは日本人にとっては少し衝撃的ですね。
また、フランスでレストランや家庭でのディナーに欠かせないものと言ったらワインです。豊富な河川や土壌に恵まれて育ったブドウを使用していて、土地やブドウの種類や年代によって味のバリエーションが無数に存在するのです。
フランスに訪れた際にはぜひ堪能してみてください。
テーブルマナー
食事の最中に一旦手を休めたい場合は、ナイフとフォークの先端を合わせ、漢字の八の字に置きます。また、食べ終わったらナイフとフォーク共に皿に対して3時の方向、または中央斜め下にそろえて並べます。その時気を付けたいのは、ナイフの歯は自分側に向けることです。
ナイフとフォークを落とした場合には、ナプキンの時と同様に自分で拾わず、ウェイターを呼んで拾ってもらいます。
(3)実はあまり知られていない?トルコ料理とは
写真:Yasuko Kimura「母と2人でトルコ旅ちょっとだけアブダビ」より
トルコ料理は、オスマン帝国の宮廷料理として発展しました。イスラム圏のため、不浄とされる豚肉は使用しません。しかし、トルコ料理の中心は何といってもお肉。
中央アジアから伝わった羊の肉やヨーグルトやナッツ類、黒海、地中海などの海産物、中近東の香辛料、地中海周辺で取れるオリーブオイルとトマト、アラビア周辺から広がった小麦粉とアジアの主食である米の両方を使うなど、東西の食文化を融合させた多彩な素材、味、調理法があり、煮込み料理が特に多いです。
トルコ料理の代表格
Photo Credit: j.o.h.n. walker via Compfight cc
夏祭りや屋台でも売られている肉を焼いた料理であるケバブ、レンズ豆のスープ、日本でもトルコアイスとして知られている伸びるアイス「ドンドゥルマ」、地中海付近でよく食べられているサバサンド、主食としてはピデ(ピザ)やピラフなどがメジャーです。
トルコ料理の食べ方
生活様式が西欧化する以前は、手を使って料理を食べていましたが、スープやピラフ、コンポート、プディングを口に運ぶためのスプーンは古くから存在していました。西洋式のテーブルマナーの普及にともない、ナイフやフォークが使われるようになりました。
全体的にオリーブオイルをふんだんに使ったり、油っぽい料理が多いのが特徴ですが、そのバリエーションの多さには和食に負けないくらいです。
気になる料理は見つかりましたか?
今やさまざまな国の料理が日本で食べることができます。しかし、調理法や使っている素材や食べ方は、日本人向けにアレンジされたものも多く、現地で食べるものとは違うはず。
自分の足で現地に訪れ、その国の料理を口にすることで「日本で食べていたものより美味しい、美味しくない」という気づきが、その国の美食のスタンダードを教えてくれるはずです。食は、各国が脈々とつくりあげてきた歴史を体感できる一番身近なツール。世界三大料理の片鱗を、思わぬ国で見つけることもあるかもしれません。
■Ryo Kaga「日本を世界を食べ歩き」
■トモテラ「年跨ぎパリ旅行ちょっとランス」
■Yasuko Kimura「母と2人でトルコ旅ちょっとだけアブダビ」
■Jun「辛いものに囲まれたパンダと出会えた四川 成都への旅」