Traveler’s Express 「澁井惇さん – カウチサーフィンで巡る、“人”と出逢う旅 – 」

旅とは、良くも悪くも一過性のものだ。そこで生まれ育った人の常識が、非常識として自分には理解できないことや、その逆も日常茶飯事である。一過性であっても、数々の衝撃は、知らず知らず旅を育ててくれるものだ。
今回はカウチサーフィンを駆使して、人との出会いを楽しむ旅を続ける「惇さん」をご紹介。今までに約30カ国を旅していて、現地の人々とのエピソードは、もはや語り尽くせないほど。カウチサーフィンを使おうか迷っている方、より現地密着型の旅をしたい方、必読です。

Traveler’s Express「澁井惇さん – カウチサーフィンで巡る、”人”と出逢う旅 -」

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(ストックホルムでホストしてくれたファミリー)

「違い」を知る旅への憧れ

―一番最初に海外へ行ったのはいつですか?

確か18歳の時。友達と3人で、シンガポールとマレーシアに行った。シンガポールは英語圏で、街がとても綺麗だったけれど、マレーシアは全然違った。国境を渡るとすごく汚くなって、物価が安いところは治安が悪かった。

―トラブルに見舞われたりはしなかったんですか?

オレにとってはそれがはじめての海外で、当時はほんと世間知らずだったから、詐欺にあったね。無料でいいから案内してあげるって言ってくれた人がやさしくて、色々な所を回ってくれたけれど、最終的に1人3万円くらい要求されて。でもその時はオレも若かったからか払いたくなくて、ハゲてないのに「ハゲー!」とか、めちゃくちゃなことを日本語で言って対抗したよ(笑) 最後は、まあ案内はしてくれたからなと思って、とりあえず1000円払った。その時は、結構緊迫した雰囲気だったし少し凹んだけれど、最初の旅で経験して良かった。平和ボケした日本との違いを実感できたよ。

―旅へ行くのが好きになった理由は何なんですか?

高校3年生の夏休みに、友達が各駅で北海道まで行ったっていう話を聞いたとき、格好いいなあと思った。その友達と全部自分たちで計画して、青春18きっぷを使って、各駅停車で9時間くらいかけて大阪に行ったな。ユースホステルっていうものも、この時初めて知った。大阪って同じ日本なのにさ、全然違う雰囲気なんだよね。衝撃だったのは、大阪駅ビルの地下の飲食街でイカ焼きを食べてたら、隣のすごいか弱そうなおばあちゃんが大声で「くそまずいわ、これ!」って。笑 関東のおばあちゃんと違う!って。日本でこれだけ違うのに、海外に行ったらどうなるんだろう?って思った。

国だけでなく「人」が見えるカウチサーフィンの魅力

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(モロッコの港街、タンジェでホストしてくれた家族)

―国という単位に限ったことではなくて、その土地その土地で独自の文化がありますよね。

色々なところに行くと、それぞれが、あまりにも違っていることがおもしろいよね。知らないところに行くのもそうだし、現地の人と話すのがすごく好き。それもあってカウチサーフィンを使っているかな。出会いを大事にする旅にしたくて。

―カウチサーフィン、いいですよね。わたしも旅に出るときは愛用しています。

タイのバンコクで初めてカウチサーフィンを使ったんだけど、カウチサーフィンって何語が話せるか、プロフィールで確認できるから、日本語を少しでも喋れる人を選んだ。でもね、実際はほとんど喋れなかった。こんにちはって言えれば、話せることになっているみたい。笑

―その人と、どんなことを喋ったんですか?

日本の歌や漫画、ドラマの事かな。その後バンコク市内を案内してもらって、お寺の参拝方法や歴史を教えてくれた。一緒に市内を案内してくれたのは新鮮だったな。それ以前も旅はしていたけど、現地の人が案内してくれるっていう事はなかったから。

―ツアーだと、良くも悪くも現地の人と交流する必要がないですからね。

ツアーは結局、本とにらめっこ。決まったコースや決まった説明しか載っていない。探せばいくらでも書いてある情報だと思う。でも現地の人と話したかったし、何より現地の人と同じように過ごしたかった。ホテルに泊まったら、それはできない。ただ、タイではカウチサーフィンで出会った人には案内をしてもらっただけで。さすがに知らないところに行って、知らない人の家に泊まるのは抵抗があった。でも、台湾で「ここは大丈夫だろう」と思って初めて泊めてもらったら、すごく楽しくて、1週間しかいなかったのに1ヶ月いた気がした。それから、もうホテルを使わなくなったよ。

十人十色のホストたち

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(ストックホルムでホストしてくれたカップル。料理しているものは・・・?)

―カウチサーフィンだからこそ味わえるものって大きいですよね。

カウチサーフィンを使うから分かる、現地と日本の違いってたくさんある。普通の旅行では、ありえない経験もたくさんできるしね。スウェーデンのストックホルムで、ホストのお父さんがハンターだったの。で、朝に“ムース”っていう世界で一番でかいトナカイを料理してくれた。サイぐらいでかかったなあ。スウェーデンの人もなかなか食べられないみたい。獲る量も決まっているし。これはすごいおいしかったよ。日本では食べられない。

― 地元ならではの食事も、意外なものが出てきたりして面白いですね。他にインパクトのある人との出会いはありましたか?

いっぱいあるなあ。ヨルダンの、死海の近くの砂漠にあるホストの家がなかなか見つからなくて大変だったな。結構有名な人で、環境活動を広めたり、色々なプロジェクトをやっている人だった。中東ってあんまり良くないイメージだったから、多少家が遠くても、リファレンスで「ポジティブ」が多い人を選んだ。その人が建てた、土壁の家に泊めてもらったけれど、触るとどんどん崩れるの。シャワールームも外にあって、屋根がなくて星空が見える。おもしろかったよ。中東に対するイメージも、人の優しさに触れてすごく変わったな。

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(ヨルダンの若者たち。惇さんをホストしてくれた男性を慕い、ゴミ拾いに勤しんでいた。)

それから、ニューヨークに行った時、初めて黒人の家に泊めてもらった。いつも会って3分くらいですぐ仲良くなれるけれど、この人とは全然話が盛り上がらない。むすっとしてるの。おやおやと思った(笑) でも、音楽の話になって、1950~60年代のオールディーズが好きだって言ったら、「ちょっと流してみろ」って。持っていたウォークマンをスピーカーにつないだら、彼とその人の彼女が突然踊りだした。で、俺もとりあえず一緒に踊ってみた。笑 そしたらすぐ仲良くなった。ブラザーって呼んでくれた。

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(ニューヨークで、打ち解けたホスト)

デンマークの田舎でホストしてもらったこともあるよ。「レゴランド」っていう、何もかもレゴでできたテーマパークがあるんだけど、ホストの家からバスで1時間くらいかかるのに、そこまで車で迎えに来てくれてさ。しかもJUNって書いた看板まで作ってくれた。笑 迷子にならないようにって思ったんだろうね。すごく嬉しかった! 奇抜な髪型のおっちゃんで、マジシャンの肩書きもあって、夜すごく眠いのにがんがんマジック教えてきたよ。俺がちょっとうまくやると、ふてくされてたけど(笑)

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(デンマークにて、マジシャンのホストと。)

しあわせの度合いはそれぞれ違う

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(ヨルダンのホストの娘さん。シャボン玉を気に入っていた)

―カウチサーフィンを使っていると、どうしても言葉の問題がでてくるかと思います。

旅行の英語って、そんなに難しくない。けど、より深いことは話せないから、それじゃあだめだなあと思った。仕事でインドネシアに行った時も、なかなか通じなかった。それがすごく悔しくて、それからきちんと英語勉強するようになったかな。でも今は留学するより学びたいことがほかにあって。

―というのは?

もともと海外ボランティアに興味があった。それは今も昔も興味はあるけど、一回社会に出て日本でまず実用的な技術を学んでおきたい。何事も、やり方次第なのかなって。東南アジアのタクシーの運転手は、学校に行く時間とお金がないから運転しながら観光客と喋って英語を勉強していた。いくら学校へ行っても、喋れない人は喋れない。目的がしっかりしていることが重要だなって思えたんだ。東南アジア行くと、色々なことを考えさせられるよ。彼らは自分の考えを強要しないし、その自然なスタイルがかっこいいなって思う。

―確かに、東南アジアは今一番若々しい国かもしれませんね。

パワーがすごいよね! オレが泊まった中で、一番緊張したのはフィリピンだった。首都のマニラって結構危ないところで、マニラのホストが「ひとりじゃ危ない」ってずっと車で案内してくれて。そのホストの家もすごくて、まず家の壁がめっちゃ高い。その敷居の中でバイオハザードに出てくるような中型犬が10匹くらいと、熊みたいな犬が一匹別の檻にいた。こうしてないと、家の中に強盗とか入ってくるんだって。すごく恐かったなあ。

傍観者でいるのではなく、現地で体感する価値

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(フィリピンのマニラにて ホストファミリーと。)

―マニラのその警備体制は日本じゃありえないですね・・・。それくらい貧富の差が激しいのかもしれません。

インドネシアとかは、人口は日本の2倍くらいなのに、平均年齢が27、28歳くらいなの。街中を歩いていても若い人しかいないから、ここも活気があって、おもしろい。東南アジアへ行くと、みんながにこにこしてるから、幸せの度合いはお金じゃないんだなあって感じるな。日本にいるだけじゃ、わからないことが多いし、生きた教科書みたい。それに、そういう全然違う場所で育った人と話して共感し合えると、すごいうれしい。ましてや海外なんてさ、言葉も違うのに共感しあえるなんて、すごいことだと思う。

―考えていることって、良い意味で世界共通なのかなって思ったりはします。

そうだね。人間らしいのかな。海外の人は素直に思ったままのことを言う。そっちのほうが、返って心に沁みる。言葉も食べてるものも違うし、生活スタイルも違うけど、何かに対しての考えは一緒になことがあるから、面白いなって。

―シンガポールとマレーシア、日本と韓国のように、お隣の国同士なのに、全く違うということもありますしね。

所変われば、だろうね。いろんな人がいるよ、日本人もいろんな人がいるし。海外行って、そこまで危ない目に遭う必要はないけど、日本とは違うんだって感じた方がいいと思う。日本にずっと居るとそれがスタンダードになってしまうけれど、世界から見たら日本はどう見えるのかってね。国の数、文化の数、人の数だけ価値観があるから、どれが正しいとかではなくて、視野を広げてお互いを尊重しあえたら素敵だね。海外のおいしいとこだけじゃなくて、常識からちょっと離れたところを、知っておくのもいいんじゃないって思う。

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(デンマークで、カウチサーフィンのイベントに参加)

[澁井惇:1985年生まれ。ハードウェアエンジニアとして働く社会人。休みは国内外問わず旅をしていて、特に海外ではカウチサーフィンを使い、歳の数だけ異国に訪れることをライフワークとしている。現在は30カ国を制覇。] ブログランキング・にほんブログ村へ

Misaki Tachibana

Misaki Tachibana

富士山の麓で生まれ、今は日本文学を勉強中。好きな作家は川上未映子と堀田善衛。おばあちゃんになったら、国内外問わず、山の中で書道の先生をやるのが小さい頃からの夢です。



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